残しておきたい雑談がある

リニューアルしたなぽりんブログ。(日常報告よりちょっとまとまったネタ)

わかりやすい漢方薬あれこれガイド

なぽりんは漢方薬を10年前からずっとつかっていて、良いものだとおもいます。
経験から得た知識をなるべく公平にお話しておきます。
長文注意ですよ。

前提知識

・まず言葉について。漢方薬のことを薬をつけずに「漢方」という言い方があります。中国では「方」だけで、処方や方便とおなじく、「薬」という意味があるようです。そして漢方ではない一般的な薬のことは、日本の漢方を扱う人の立場からはまとめて「西洋薬」と呼ぶ人もいます。*1
・中国の漢方の資格で「中医師」とか「中医士」というのがあるらしいです。これは中国の国家資格です。日本では日本の国家資格(薬剤師か医者)をもっていなければ漢方を患者に売ることができません。*2 中国でも最近は西洋薬がよい*3という考えもちゃんとひろまった上で漢方も生き残っています。
・本来の漢方についての説明。漢方は、(西洋)薬とちがって、「病名」に一律に出されるものではなく、「その人の体質(=証)」と症状の組み合わせに向けて処方される決まりがあります。ですので、症状だけ見れば全く同じ「喘息」とか「肝臓の調子が悪い」とか「憂鬱だ」などの病気でも、体質が違う人には、違う薬が処方されることになります。日本薬局方には、そのうちの代表的な効果しか書いてありません。したがって、日本の薬局の漢方薬コーナーでは、「どの証の人が飲んでも効きそうな、一部の効果だけを表示して、漢方を売る」ということをしています。本来の処方からみると脱法的なことをやっています。また事故を防ぐため、副作用がある漢方は置いておらず、処方後のとりよせになります。
・漢方のありがちな誤解について。漢方は、薬とちがって副作用がない(妊婦も飲める)といわれていますが、実はそうとは限りません。妊婦が飲んではいけない漢方もあります。ある漢方から発見されたエフェドリンという成分には軽いけれど中毒性があり、長い間つづけて飲んではいけないことも知られています。
・漢方は、西洋薬とちがって長く飲み続けないと効果が出ないといわれていますが、本来の中国の漢方ではそのようなことはありません。それと、これはちょっと不思議な話ですが、自分が体験した話ですので、書きます。

本当に自分に合っている漢方は、他人には苦いものでも自分にはとても香ばしい。
けれど1週間くらい飲んで病状が軽くなってくると、同じ薬なのに苦みやクセがめだってきて、鼻について、とても飲めなくなった。
2週間分の漢方をもらったのに半分あまった。
症状は無くなったからこれでよいのだろうと思った。

ということが数回、自分の身の上で、起こりました*4。ですから、自分は、味も飲む期間の目安にしています。家族の話では、最初から最後まで味はまずいままだったそうで、ちゃんと処方された分を全部飲んだ方がいい場合もあるようです。

入手方法

・日本で漢方を売ってくれる人には、大まかに分けて2つあります。
・一つめ。日本の医師免許を持っている医者(内科医・産婦人科医・小児科医)で、理由があって(西洋)薬が使えない人に代替物として、中国四千年の使用歴で不都合がおこらなかった漢方薬を処方する人。たとえば、妊婦の風邪に(感染菌の検査をしてから)葛根湯とか、子供にお乳をのませている女性が、お腹を下したので、補中益気湯とか。
・二つめ。漢方薬局と名前のついているところ。古い薬局で、地元に根付いて、キヨーレオピンやオードムーゲ*5の大きな旗や、サトーの黄色い象、緑のカエルの立像をたてているところにもありますし、旧帝国大学医学部の近くにスリ栓のガラスビンに石膏や高麗人参をつめて展示してある瓦葺き平屋の老舗もありますし、働く女性のサポートをするためネットで手広く相談業務をしている薬剤師さんもいます。日本の薬剤師資格のほかに中医師をとっている人もいます。ただ、中国4千年のものでない、健康食品や民間薬と区別せずに処方されてしまうこともあります。名前がキヨーレオピン*6なら漢方ではないとわかりますが、~~湯や~~散と表示されてあるとシロウトには効能ふくめて全く区別がつきません。また、同じ症状がずっとなおらない場合の代替案は少なめ。1ヶ月飲んで効かなかったといったのに「もうすこし長く飲まないと」と提案されてしまうとどうしても商品売りたさを疑ってしまう悲しい大人です。でも、ライザップができるよりずっと前に、個人への食事指導をしてくれる中医士の薬剤師さんがいて、本当に頼もしかった。
・かならず証をみて薬をだしてくれるのは、中医師をもっている2つめですが、病気そのものの診断に長けているのは普通の内科医です。薬剤師は中医師であっても、病気の診断や処方をしてはいけないことになっています。内科医で証診断をしっかりやってくださる方がいると心強いですが、そういうことができる開業医は貴重な存在のようです。(後述しますが、保険診療とのからみがあるので)
 
・ブランドについて。日本にも漢方のブランドがあります。薬局でよく見掛けるのは、コタローや、ツムラ、あと美容分野から新規参入してきたクラシエなどがメジャーです。中国本土の漢方の品質を知りませんが、おそらく日本製の漢方は日本人向けになっていて使いやすいのだろうとおもいます。コタローは、漢方ではない民間薬も製造して売っていて親しみやすい。ツムラでは漢方の処方に番号をつけて管理しています。ツムラの何番というふうに、ツムラで漢方番号が付与されたものなら効果の強い、スタンダードな漢方。掲載がないものは~~湯や~~散であっても漢方ではない民間薬。シロウトが「何を」処方されたのか知りたいとき心強い手がかりです。

医療用漢方製剤 | 製品情報 | ツムラ 番号さくいん
製品名ア行: 医療用漢方製剤 | 製品情報 | ツムラ 名前さくいん

全部で138番、プラス5つくらいありますが、実際に使用されるものはさほど多くありません。廃盤扱いも多いです。普通の薬局だと10種類も漢方があればしっかりそろえている方。私や家族が今までに処方された薬もみていると、漢方専門のおいしゃさんでも、きっと20種類くらいに収まるのではないかとおもいます。
・漢方の病院の探し方について。普通の大学病院や総合病院には、「漢方外来」はありません*7。一応、漢方のツムラの旧名がツムラ順天堂というとおり、ツムラを産んだ順天堂大学ならhttp://www.juntendo.ac.jp/hospital/patient/foreign/major.html漢方外来があります。北里大学にもあります。また、漢方薬をお医者さんに卸している問屋さんならもっと詳しく把握できます。そのへんのデータをひろったのか、漢方、漢方薬に詳しい病院検索ができる「漢方のお医者さん探し」こういったサイトもありますが、上記の「妊婦向けの補中益気湯のような保険診療しかやらないお医者さん」と「ガンガン強い漢方もつかっちゃう。証診断をくみあわせて内科的な部分なら漢方でなんでも治そうとする保険外診療のお医者さん」までは区別していないようです。
 

だいじな、保険とか診療代の話

漢方薬は医師免許をもっている日本の医者が保険の範囲内で処方したとき以外は、すべて保険の適用外となってしまいます。そして、保険では「この症状にはこういう診断方法をしろ。そして処方していいのはこの(西洋)薬だけ」などと詳しく決められており、漢方の処方できる症状そのものが非常に少なくなっています(上記したとおり、体質=証診断というものが必要なので無理もありません)。したがって、医師が「証診断」により「保険外の漢方」をだしてくれる場合は、診察料も、処方された漢方薬も、10割負担になります。これは、普通に漢方を買うよりも、診察料の分だけ高額になることが多いです。この診察のお金を見ると「漢方は高い」という巷間のイメージに間違いはないです。漢方治療を強引に安く挙げようとして、診断ヌキでその辺の薬局で適当に自分で取り寄せることにはあまり意味がありません。
・自分の場合は、診察料が1万円~2万円、漢方薬は1~3種類を2週間分で5千円以下ということが多いです*8
・患者さんの税金について。家族全員の診療代とお薬代が1年で10万円を越えると、お金を稼いでいる人(おとうさんとか)が給料から支払っている税金を一部かえしてもらうことができます。これは自分で申し出をします。毎年1~3月に昨年のレシートをまとめて、確定申告という作業をします。10万円を越えた分の医療費の、10%~50%がかえってきます。
・たとえば、1年間で家族あわせて6回くらい漢方にかかった。12万円の診察+お薬代を払った。とすると、確定申告をすると、お父さんは、2000円~10000円くらいもどってくるかな。支払った診察代に比べたら本当に微々たるものかもしれません。(だれかが手術などうけているともどってくる額もおおきくなります。)家計をあずかる者には大事な作業です。
・税務署は、お医者さんが患者さんからもらったお金のなかから税金をしっかり払ってくれるかには興味がありますが、ご家庭のお父さんに2000円がもどってくるかどうかはあまり深く気にしていないようです。したがって、却下されてももともとという気持で、保険外診療をうけたときも、確定申告はしておいたほうがよいとおもいます。金属アレルギーの人が虫歯の治療に合金がつかえず保険外で金歯を入れるのと同じで、体にはどうしても必要なことですよね。
・たまに、お医者さんがわで「うちの漢方は医療費控除の対象外です」とおっしゃることもあるそうですが、私にはどうしてなのか理解できません。医者と称しておきながら実際は医者ではなく中医師の方であるとか、または、患者に対して診断や治療以外のことをなさっているということになります(医療詐欺は困ります。ボランティアだと税務署に目をつけられます。プロならしっかり勉強して堂々と自信をもって治療なさってお金をきっちり患者からとってください)。税務署に指摘されるまでもなく、問題をあらためたほうがよいです。
・患者さんはお医者さんの注意書きなどは気にせずに治療を受けたなら堂々とレシートをいただいて医療費控除をしましょうね。
・美容目的など、必要性が薄い薬を、自分の判断で薬局で買う場合もありますが、治療に必要でない薬の購入は、法律上、医療控除の対象にならないです。(貧血サプリなどは女性にしてみれば納得いきませんが)
・忙しいので(または診断は費用が高いので)ネット通販でという人もいますが、個人的にはネット通販では問診フォームに入力したところで、証を見てとることができないとおもいます。*9 休暇をとってでも必要な医者にかかることもできないような職場ばかりだったら、日本の社会のほうがおかしいとおもいます。自分の命の面倒は自分で見たいので、それができるように休暇を下さい。
 
特に中年以降の女性の体には漢方が必要になることが多いです。是非うまく使いこなしてください。なぽりんからは以上です。

*1:西洋でも同じようにハーブ薬をつかってますのでどうかとおもいますけど

*2:なお、中国では、漢方の薬剤師と、鍼灸師と、マッサージ師さんは、国家資格で、試験も難しく、日本より権威があるみたいです(さすが発祥の国ですね)。歴史的にいえば、漢方が内科、鍼灸が外科を扱う医者だったそうです。中国で習う鍼灸師の使命とは「手到病除」しゅとうびょうじょ、手が届くかのように(体の奥にあっても)病を除く、だそうでこれもかなりかっこいいです。

*3:風邪にはすぐ仕事やすんで病院いって抗生剤の点滴とか、インフルの結果が出ればタミフルとか

*4:証をすごく詳しくみてくれた医者の出した薬でだけ、そういうことが起こりました

*5:薬局で見かける『オードムーゲ』ってなんだ? - いまトピ

*6:ニンニクと牛黄のエキスで、スタミナがつくといわれています

*7:あたらしい西洋薬や内視鏡手術方法やCT診断装置やワクチンといったものが続々と舞い込むので、命に直接かかわらない症状を治す漢方は、つっこんで勉強するヒマがないので、。わたしの意見では、体のどこかがレントゲンに写るか血液にでるほど本格的に壊れるまで本腰入れた治療にとりかからないのでは、QOLが置き去りになってるので不満です。なお、漢方では未病を治すという言い方があり、予防医学に優れているという意味です

*8:自分は妥当だとおもいますが、たまにちょっとやっぱり家計の中では贅沢かなーと悩みます。いやいや未病を治すため。それに自分には効いてます。

*9:そもそも、自分の場合は、症状がころころ日々によって変わるようなへんな体調だから漢方を利用しようとおもったのです。通販のお薬が届くまでには、最初に入力したのとは違う体調になってしまっていて、自分でもその薬を信用して飲めないことになってしまい、がっかりした経験があります。